行き場を持たない木材が出発点になる
日本各地のダムには、大雨や台風のたびに大量の流木が流れ込む。水の流れを妨げ、景観や生態系にも影響を及ぼすこの問題に、株式会社HATSUTORIは製炭炉を持ち込む。流木や伐採残材を炭化し、土壌改良・農業・園芸に使える純国産バイオ炭として製品化することで、廃棄問題と農業資材の不足を同時に解く取り組みを進めている。原料の調達から炭化・販売まで一社で担うことが、製品品質と安定供給の基盤となっている。
農業への導入者からは「作物の根張りが変わった感覚がある」という声が届いているという。バイオ炭は施用後も土壌に長期間留まり炭素を固定し続けるため、効果の持続性への評価が高い。農地の条件に応じた粒度・炭質の調整にも応じており、現場に適した状態での提供を行っている。
素材の特性を読む、製炭炉の設計力
流木は含水率が高く形状もまちまちで、一般的な炉では安定した炭化が難しい素材だ。株式会社HATSUTORIが自社開発する製炭炉は、空気の流れと熱伝導を設計段階から組み込み、素材の状態に関わらず均一な炭化処理を実現している。温度と酸素の制御が自在に行える機構を持ち、炭素固定率を最大化する構造を採用。安全性と操作性にも配慮し、小規模農家でも扱いやすい仕様となっている。
製炭炉は販売品としても展開しており、自前での炭化体制を整えたい農業法人や団体の選択肢となっている。宮崎市別府町を拠点に2023年4月に設立。製炭炉の開発と販売、バイオ炭の製造と卸売を事業の二本柱として展開している。
循環が地域経済の新しい回路をつくる
廃材を焼却・埋め立てで処分するコストと、農業用資材を外部から調達するコスト。この二重の支出を、地域内の廃木材をバイオ炭化することで同時に減らす構造が事業の骨格にある。木材の収集・選別・乾燥・炭化という工程に地域の人材が関わることで雇用も生まれ、農地での活用が進めば収穫・品質の面でも地域農業に貢献する。SDGsとの整合性が高い純国産製品として、エコ活動や環境関連の取り組みとの連携にも期待が高まっているという声がある。
廃材というマイナスの起点から、農業資源・雇用・環境改善という複数のプラスが生まれる構造は、「循環型社会」という言葉の具体的な姿として理解しやすい。関心を持つ自治体や農業団体も存在するという話も聞かれる。
人と自然の共生という、事業の根拠
バイオ炭をつくることは目的ではなく、人と自然が共に生きる仕組みをつくるための手段だ。代表・服部かおる氏はそう語り、見過ごされてきた木材に価値を見出す積み重ねが社会と環境に確かな変化をもたらすという信念を事業の根拠に置いている。地域の現状や関わる人々の声から目を背けずに歩むという姿勢が、現場対応の丁寧さや製品設計の方向性に反映されている。日本の活性化と持続可能な社会の実現という目標は、宮崎という具体的な場所からの発信に実質を持たせている。
製品の品質や性能だけでなく、製造の背景や工程を重視するというスタンスが、株式会社HATSUTORIの事業を単純な製品製造と区別している。炭を媒介に、農業・林業・環境・地域産業という異なるフィールドをつなぐ役割を担おうとしている点が、この会社の独自の立ち位置を形成している。


